2002年に、わたしたちがかねてからあこがれていたエジプトを訪れた。
実は、海外旅行の候補地としてエジプトをあげていたのは、ずっと以前のことだった。
1997年11月、「ルクソール事件」がおこった。
王家の谷をはじめ数々の遺跡があり、欧米の人々にとっては寒さからのがれるリゾート地でもあるルクソールには、毎年、世界各地から多くの人々が訪れる。
そんな外国からの観光客を標的にして、無法のテロリスト集団による乱射事件がおこった。事件では10人の日本人をふくむ63人もの人々が犠牲となった。
この事件が、当時エジプト行きを考えていたわたしたちをとどまらせた。
もちろん、しばらくはルクソールへのツアーは禁止されるなど、物理的にもエジプトを訪れることは困難だったが、ツアーが再開されてもやはり二の足を踏まざるをえなかった。
そしてようやく悲惨な事件から5年が経ち、現地の治安が安全であることが幅広く伝わり、ようやくエジプトへ行きを決断した。
とは言え、実際に訪ねてみれば、カイロの街や空港のセキュリティは予想以上にきびしく、わたしたちのツアーに、機関銃を持ったガードマンが随行したことにはびっくりした。すでに忘れかけていた残虐事件の記憶が、まざまざと目の前にせまってきて、ちぢみあがる思いだった。
それと、テロとは無関係だが、わたし自身の気のゆるみから、飲料水や食べ物にあまり用心していなかったことがたたり、現地では激しい腹痛に苦しむことにもなった。
21世紀に入って世界中を震撼させた「9・11」をはじめ、いまなお世界各地で卑屈なテロ事件がおき、一般市民が犠牲になっている。テロがなくなる世界を願いつつ、いまやいい思い出となった腹痛の苦しみもできるだけ詳しくお伝えし、エジプトでの旅行記をまとめてみた。