現役を退任した翌年の2017年、かつて労働組合でともに汗を流した友人を頼って、夫婦で奄美大島の観光に出かけた。

 友人の名前は西さんと言って、奄美大島出身の彼は島内のすみずみまで知り尽くしている人だ。そのころ、東京に住み気象庁で働いていた西さんは、私たちの日程に合わせて休暇を取って帰省し、わざわざレンタカーまで借りて島内を案内してくれた。

 そのうえ、奄美在住のお兄さんのお宅におじゃまして、奥様が腕をふるったごちそうの数々や地元の黒糖焼酎もたっぷりいただいた。庭でとれたバナナは甘くておいしく、ミラクルフルーツの奇妙な味には目を丸くした。楽しい一夜を過ごし、西一家をあげてのあたたかいおもてなしには感激するばかりだった。

 もちろん、南国の突き抜けるような空ときらきらと青く輝く海、はるか彼方にまでひろがる原生林は圧倒的で、そのはかりしれない雄大さには感動したし、波のざわめき、潮の匂い、風にゆらぐ木々の音、鳥のささやき、そのすべてが胸にしみいるものだった。

 奄美大島には名瀬測候所がある。国内の測候所がほぼ全廃されるなかにあって、名瀬測候所を廃止するなという島内の人々の運動の力で、今でも測候所が住民の命と暮らしを守る砦としてゆるぎなく存続している。現役時代には、組合の仕事で測候所に一度だけおじゃましたことがあるが、今回はいたって気楽な旅行を心ゆくまで楽しんで帰ってきた。

 あらためて、奄美大島の魅力を存分に味わわせてもらった西さんに心から感謝するとともに、この思い出をいつまでも残しておきたくなり、旅の記録をとりまとめてみた。

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