9月10日 ザルカンマーグート~ハルシュタット

ザルカンマーグートからハルシュタットへ

雄大な大自然に囲まれて 天気は朝から晴れていたが、午後は雨の予報が出ていた。今日は遊覧船や登山電車にのったりと野外活動の一日となるので、天候がひときわ気になった。

マリアの結婚式のロケ地となったシュティフト教会を訪問

 ガイドの君島さんといっしょにバスに乗り、8時にホテルを出発する。スーツケースはすでにバスに積み込んでいた。午前中は、ザルカンマーグートまでむかう。ここも、各所でサウンド・オブ・ミュージックのロケに使われた。

 道路の両側にはのどかな田園風景がひろがっていた。どこまでも遠く緑の牧草地帯がつづいていた。太陽がまぶしく、田舎の匂いがした。

シュティフト教会の全景 バスはモント湖の畔に停まり、モントゼーという小さな街にあるシュティフト教会を訪れる。サウンド・オブ・ミュージックでは、トラップ大佐とマリアが結婚式をあげるシーンの撮影にこの教会が使われた。ただし、物語上ではザルツブルク市内のノンベルク修道院で式をあげたことになっており、黄色い壁の教会の外部は映画には出てこない。

 まだ9時前だったが、教会にはたくさんの子どもたちが集まっていた。長い夏休みが終わって、今日から新しい学年が始まるらしく、始業式を兼ねたミサがおこなわれるそうだ。オーストリアでは、カトリック教徒が国民の9割近くを占め、学校行事を教会でおこなうことも珍しくないらしい。

始業式のミサに集まった子どもたち 9時になると教会の鐘が鳴った。子どもたちの邪魔をしないように、私たちはそそくさと教会を出て、ふたたびバスに乗り込んでモント湖のほとりを走り、 ヴォルフガング湖にむかった。

 ザンクトギルゲンの街でバスを降りて、遊覧船の船着き場まで歩く。途中、地元の老人会の一行を追い越す。お年寄りたちはみんな幸福そうだ。オーストリア国民は手厚い社会保障制度に守られていて、その代わり税金も高い。ホームレスには国から十分な生活費が支給されるそうで、地元に住む君島さんは「これでは働く気がしなくなる」と嘆いたが、働く人たちの権利が大事にされているだけで、当たり前のことだと思う。

老人会のみなさんとヴォルフガング湖の遊覧船に乗り込む

モーツァルトの母親の実家

 ザンクトギルゲンはモーツァルトの母親が生まれた地であり、姉のナンメルも結婚してここで暮らしていたそうだ。船着き場のあるヴォルフガング湖には、カヌーやボートが浮かんでいた。オーストリアは内陸にあるが、マリンスポーツが盛んでヴォルフガング湖ではヨットの世界大会なども催されるらしい。
 遊覧船に乗り込み、出発時間ギリギリに先ほど追い越した老人会のお年寄りがどやどやと乗り込んできて、あっという間に船外のデッキは満席になった。船内も人でいっぱいで、ほとんどが老人会の男女だった。ビールをジョッキで飲んでいるお年寄りもいる。年寄り同士の会話は声も大きく、船内はうるさいほどだ。

ヴォルフガング湖に浮かぶ船 船は10時20分に出港し、ゆっくりと走り出した。湖面を見渡すとカモをはじめさまざまな水鳥が浮かんでいた。ウインドサーフィンを楽しんでいる若者もいた。水面は、エメラルドグリーンとまではいかないが、深い青色をしていて、かなり水深はありそうだ。
 空はどんよりと曇り、天気は急速に下り坂になっているのを感じる。今にも雨が降りそうで、雲の隙間からかろうじて見えていた青空も、やがて厚い雲がふさいでいった。途中、いくつかの船着き場に停まりながら、その都度、団体客が乗り降りした。40分ほど船に乗り、登山鉄道の出発点となるシャーフベルグバーンに着いた。

客車の後ろに連結した機関者 老人会の団体がやや遅れて船に乗り込んだため到着も遅くなり、そのおかげで、11時ちょうどに出発するはずだった列車に乗り遅れてしまった。幸いその20分後に次の便があり、そんなに待つこともなく列車に乗ることができた。
 登山電車は、2両の客車の最後尾に蒸気機関車がつながれ、機関車の歯車が線路のレールの間にあるギザギザの補助レールにがっしりと噛み合い、強力に客車を押し上げてすすむ。アプト式と呼ばれる登山鉄道独特の走行法で、きつい傾斜を登っていくことができる。乗った機関車は燃料に石油を使っていたが、石炭で走る蒸気機関車もあるそうだ。

急傾斜を蒸気機関車に押されながらシャーフベルク山を登る

ザルツカンマーグートの美しい景色 約40分かけて標高1783メートルのシャーフベルク山頂まで登る。頂上からは2千メートル級の山々と湖が散在するザルツカンマーグートが一望できる。ちなみに、ザルツカンマーグートとは「塩の宝庫」と言う意味で、その名の通りこのあたりは岩塩が豊富にとれる。1997年には、「ハルシュタット、ダッシュタイン、ザルツカンマーグートの文化的景観」として、ユネスコの世界遺産に登録されている。
 走り出すとすぐに急な坂道に入る。機関車は苦しそうに煙を吐きながら、ゆっくりと線路を上っていく。傾斜のために、窓の外の景色が傾いており、線路脇の小さな小屋が斜めに建っているような錯覚におちいる。

シャーフベルク山の頂上で 木立を抜けると、ザルツカンマーグートのすばらしい景色がひろがった。遠くには山々が見え、足下にはさっきまで遊覧船に乗っていた湖が見えた。まさに、サウンド・オブ・ミュージックにでてくる美しいオーストリアの大自然に感動した。
 途中、線路のすぐそばの道をリュックを背負って歩いている人たちの姿が見えた。ハイキングで頂上まで登るのだろう。窓から手を振ると、むこうも振り返してきた。
 列車は12時にシャーフベルク山の頂上に到着した。駅の近くにはホテルやレストランもあった。山頂から見る眺めは格段にすばらしかったが、約15分後には下り列車が出発するので、大急ぎで景色を写真におさめ、ふたたび列車に乗り込む。13時には麓のシャーフベルグバーンに到着し、徒歩でザンクト・ヴォルフガングの街のレストランへとむかった。

ザンクト・ヴォルフガングの町並み 昼食は、ラルフ・ベナツキーのオペレッタの舞台ともなった「白馬亭」というレストランで郷土料理を味わう。ヴォルフガング湖で獲れたという鱒が一匹丸ごと出てきた。塩焼きにしてバターソースがかけてあり、ポテトが添えられている。デザートはアップルケーキで、リンゴのかけらが暖かい。
 食後、街の教会を見学する。巡礼教会となっているそうだが、入るととても古い感じがした。教会には多くの祭壇画が飾られていてた。
 みやげ物や日用品の店などがならぶザンクト・ヴォルフガングの街をゆっくりと散策して、15時にバスに乗って世界遺産の街ハルシュタットにむかう。雲は依然として厚かったが、雨が降る気配はなかった。

世界遺産ハルシュタットは韓国と日本女性のあこがれの地

ハルシュタットの代表的な風景 16時にハルシュタットに到着する。歴史的な建造物や美しい街並みがあるわけでもなく、湖畔にひろがった田舎町という風情で、97年に世界遺産に登録されるまでは訪れる人も少なかったようだ。
 世界遺産に指定されたとたん、世界中から観光客が押し寄せ、さらに、韓流ドラマ「春のワルツ」でハルシュタットがロケ地となったことから、それ以降、韓国や日本の若い女性が大挙して押しかけるようになったらしい。この日も、韓国語や中国語が飛び交っていた。もちろん、私たちをふくめて日本の観光客も多い。

 ガイドの君島さんによると、世界遺産登録の決め手となったのは、世界最古の岩塩が採れること、古代鉄器時代からケルト人が住み着き「ハルシュタット文化」を育んできたこと、それに加えて、埋葬して10年以上経ってから頭蓋骨だけを取り出し、納骨堂に納めるというこの土地独特の文化がユネスコに評価されたそうだ。ちなみに、「ハル」とはケルト語で塩という意味だ。したがって、ハルシュタットとは「塩の街」ということになる。

ハルシュタットの中心地 納骨の習慣は今はなくなったが、バインハウスと呼ばれる納骨堂は、街の中心にある教会奥の墓地に建っており、おびただしい骸骨が1.5ユーロで観光客にも公開されている。自由行動の際、納骨堂を見学した人たちもいたようだが、弔われている故人には申し訳ないが、気味が悪かったので、私たちは見に行かなかった。
 ミカエル礼拝堂の高い尖塔を真ん中にして、左には美しい湖面ひろがり、バックを山が取り囲むハルシュタットの「ベストショット」が撮れる場所まで君島さんに案内してもらい、その後は自由行動となった。街の中をぶらつき、土産物店を見ながら集合場所のバスの駐車場まで戻ってきた。途中、ここでとれた岩塩を売る店が何軒かあり、漢字で「元祖」と書いてある店もあった。しかし、オーストラリアの岩塩はすでに前日、ザルツブルクで買い求めていた。

ハルシュタットの教会をバックに バスに乗って、フシュルという村まで移動する。雲はいよいよ重く垂れこめ、天気予報通りに雨がぽつぽつと降り出し、やがて大雨となった。うとうとするうちに、本日の宿となるフシュル湖畔にあるシェラトン・フシュルゼー・ザルツブルク・ホテル・ヤークトホフに到着した。ホテルの部屋に入っても、雨はずっと降っていた。
 湖水地方の天気は変わりやすいと聞いていたが、外を観光しているときは一度も雨に遭わなかったのはラッキーだった。遊覧船あり登山鉄道ありの小旅行で疲れたが、オーストリアの自然をこよなく堪能でき、楽しい一日を過ごすことができた。

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